早期発見の必要性
本当に早期発見・早期治療で
生存率は改善するの?
臨床進行度別5年相対生存率を見れば理解できます。
①『がん』が臓器に限局している場合
②『がん』が領域(つまり臓器の周囲)に転移している場合
③『がん』が他臓器に転移している場合
の3通りに分けて、5年相対生存率で評価します。
相対生存率とは、あるがんと診断された場合に治療でどのくらい命を救えるかを示す指標と考えて下さい。
相対生存率が高いほど、命を救えたと理解できます。
臨床進行度別 5年相対生存率
(胃・男女計・年診断例)
臨床進行度別 5年相対生存率
(大腸・男女計・年診断例)
胃がん、大腸がんの場合、ともに①『がん』が臓器に限局している場合には、
5年相対生存率は96〜97%であり、ほとんどの方が5年後は生存していることがわかります。
早く発見することで命が助かることがわかります。
無症状での早期発見が必要です。
無症状でも胃カメラ・大腸カメラを受けて下さい。
しかし、膵がんの場合はどうでしょう。
臨床進行度別 5年相対生存率
(膵臓・男女計・年診断例)
限局されて発見されても5年相対生存率は42%と半数も助かりません。
これは、限局されて発見しても、膵がんは広範囲に周囲に拡がっているからです。
では、膵がんの場合は、早期発見は無駄なのでしょうか。
そんなことはありません。小さな状態で発見すれば生存率は改善できるのです。
10mm未満で発見された膵がんに関しては、10年生存率は94.7%とも報告されています。
欧米2016年の報告で、腫瘍径が最も生存率に影響する因子であることが報告されています。
つまり小径(10mm未満)で発見できれば、胃がんや大腸がんと同様に予後が改善できるのです。
腫瘍径10mm以下の腫瘤を診断するためには、感度(病気の人を検出する力)、
特異度(病気でない人を検出する力)の高い検査である超音波内視鏡検査をお勧めします。
いち早く、膵癌早期診断に取り組んだ広島県・尾道市では「膵癌早期診断プロジェクト」を立ち上げ、
早期膵癌(10mm未満)の診断件数が増加した結果、外科的切除率の改善、5年生存率の向上が認められたと報告されています。
このプロジェクトでも使われたのは超音波内視鏡検査でした。
膵がんのリスクファクターも明らかになっています。
リスクファクターのある方は、無症状のうちにより感度・特異度の高い検査(超音波内視鏡検査)を受けて下さい。
膵癌のリスクファクター
- ①家族に膵がんの人がいる
- ②糖尿病と診断されている
- ③慢性膵炎と診断されている
- ④膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の数値が高い
- ⑤腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、DUPAN-2、Span-1)の数値が高い
- ⑥腹痛・背部痛あり体重減少もある
- ⑦他の検査で膵臓に「のう胞(液体のかたまり)」を指摘された
- ⑧他の検査で膵管拡張を指摘された
- ⑨他の検査で膵萎縮、膵石を指摘された
- ⑩他の検査で胆管拡張を指摘された
このうち、①②に関しては、膵がん検診の対象となります。
しかし、糖尿病の血糖コントロールが悪化したり、③〜⑩を指摘されている方は、保険診療で超音波内視鏡検査を行えます。
より早期の膵がん発見に努めるためには、
リスクファクターのある方は無症状のうちから、超音波内視鏡検査を受けて下さい。
⑥に当てはまる方へ
当院では腹痛・背部痛・体重減少のいずれかがあり、
胃カメラ・大腸カメラで異常がない方は、膵がんを疑い保険診療として超音波内視鏡検査をお勧めしています。
腹痛・背部痛・体重減少のある方は、まず当院で胃カメラ・大腸カメラを受けた後に超音波内視鏡検査をお受け下さい。